低身長症

低身長症について

低身長症について

子供の体の成長は実に千差万別で、親としては何かと気になるものです。背が大きくて心配という声はあまり聞きませんが、背の低い子の場合には、「クラスで一番前ですが、このまま背が伸びないのでは」とか「背が低いのは何かの病気なのでは」とか心配になってしまいます。

 

ここでは、背の低い子供を持つ親の心配に対する答えのヒントとなるような情報を提供したいと思います。

 

低身長とはどのくらいの身長のことを言うのですか

昔から「小さく生んで大きく育て」という言葉があります。それなら良いのですが、出生時に体が小さくてその後も身長が伸びない子、出生時は標準の身長であってもその後あまり伸びない子、ある年齢から身長の伸びが穏やかになってしまう子など、低身長にはいくつかのパターンがあります。

 

子供の身長は千差万別ですが、いずれにしても、同年齢の子供と比べて身長が明らかに低い者を低身長と言います。では、低身長とはどの程度の身長を指して言うのでしょうか。

 

ある子供の集団(例えばあるクラス)での身長を調べてみると、大きな子から小さな子まで真ん中の子(平均値)を中心としたばらつきが出てきます。

 

教室の一番前の席の子だけを低身長というのでしょうか、いや、クラスの平均の1割以下の背の子を低身長というのでしょうか?こんなことを言っていたのでは答えが出ませんね。

 

そこで、統計学という手法が登場して、どこからが低身長なのかの基準を設けてくれます。

 

この基準には、平均値からの離れ具合に全体のばらつきの程度を加味して計算されるSD値というものを使います。

 

このSD値が-2SDの場合に(マイナスは平均よりも背が低いことを示し、マイナスの数字が大きいほど背の低さが際立っている)低身長とされます。でも、この1年間で身長が急に伸びたため、-2SD であっても1年前と比べてSD値が急激に改善していることもあります。

 

このため、低身長のもう一つの判断基準には、身長の伸び率も加えられています。ここでも数値化がされていて、-1,5SDが2年連続続いた場合に低身長とされます。このように、SD値は、ある子どもの集団中での統計処理ですから、男女別、あるいは人種別に判断されて計算される数値です。

 

「低身長の判断基準は分かりました。では、この数字は実際にはどんなイメージになるのでしょうか」。-2SDの基準に相当する子供は、100人に2人程度になります。

 

すなわち、1クラス30人として、3クラスに2人程度となります。後で述べますが、このような低身長に相当する子であってもとくに問題のない子がほとんどで、治療の対象となるのは1割以下と言われています。これに当てはめると、ほぼ1校で1人程度の稀な病気であるということがお分りいただけると思います。

 

病院に連れていく低身長の目安は

子供の身長がかなり低いと感じた場合、まずSD値をチェックしてみてください。調べ方は簡単です(下記*参照)。そして、SD=-2よりも低い値であれば、一応低身長を疑って、まずはかかりつけの医療機関に行きます。そこで、さらに詳しく調べる必要があると判断されれば、専門の医療機関を紹介してもらうのが一番良い方法です。

 

低身長は病気が原因の場合とそうでない場合がある

病的ではない低身長は突発性低身長と呼びます。SD値が低い子の大部分が突発性低身長に当たり、親からの遺伝によるものや本人の体質によるもの、あるいは特別の原因が見当たらない場合などがあります。一方、病的なものとしては、次のような病気が原因で低身長になることがあります。

 

1)成長ホルモンに関係する病気:成長ホルモンは骨を作って背を伸ばす働きがあり、脳の下垂体というところから分泌されます。この部分に障害があると、成長ホルモンの分泌量が少なくなって低身長になってしまいます。

 

2)甲状腺ホルモンに関係する病気:成長ホルモンと同様に骨を作って背を伸ばす働きがあるホルモンで、脳の下垂体からの指令を受けて甲状腺で作られます。従って、甲状腺の障害に加えて脳の下垂体に障害がある場合に、分泌量が少なくなって低身長になってしまいます。

 

3)子宮内発育不全(SGA性低身長症):生まれた時に体が小さくてその後の成長も遅くて、低身長になってしまう病気です。

 

4)骨や軟骨の病気である軟骨異栄養症:軟骨は軟骨細胞から分泌されるタンパク質などの働きで作られます。この軟骨細胞自体が生まれつき増えにくくなっている子では、軟骨が成長しにくいために背が低くなってしまいます。

 

5)内臓(心臓、肝臓、腎臓)の病気:これらの臓器に病気がある子では、栄養状態が悪くなることから背も伸びにくくなります。

 

6)染色体異常によるもの:女性の性を決める染色体であるX染色体に原因をもつターナー症候群では、正常の女性が2本持っているX染色体が1本しかありません。ほとんどが胎児の段階で流産となりますが、2000-3000人に一人の割合で発症するので、それほど稀な病気ではありません。

 

また、常染色体の異常によるプラダーウイリー症候群やヌーナン症候群といった稀な病気もあります。  
この他、思春期早発症と言って、他の子よりも思春期が早く来て身長が伸びるもののその後すぐに伸びが止まり、結果的に他の子よりも低身長になってしまうという病気もあります。

 

低身長の検査はどんな感じなのですか

まず、その子が低身長なのかどうかを判断するために、身長と体重の成長記録を確認し、SD値を計算してその子の成長の度合いをチェックします。そこで低身長が疑われた時には、低身長を引き起こす可能性のある病気のチェックのための検査を行います。

 

その一つはX線での手の骨のチェックです。子供の骨のX線写真では骨と骨の間に骨端線という隙間があり、ここに骨を作る基になる成分を分泌する骨芽細胞と古い骨を破壊する破骨細胞が沢山詰まっています。

 

これらの細胞の働きで、骨端線のある子供では骨が成長できる一方、骨端線の無くなっている成人では骨の成長がストップしています。

 

この隙間の有無や幅を調べて、骨が成長できる余地を検討することになります。また、子供の成長と関係の深いホルモン関連の検査として、まず、成長に関係するIGF-1というホルモン量のチェックを行います。

 

ここで簡単に成長ホルモンやIGF-1について確かめておきましょう。

 

成長ホルモンとは:

脳下垂体から分泌される小型のタンパク質で、肝臓などに働きかけてIGF-1(ソマトメジン)と呼ばれる成長因子を分泌させます。IGF-1はインスリンに似た構造をしていて、インスリンと同じく血糖値の調節に働くほかに、軟骨細胞や筋肉の分裂・成長を促して間接的に成長を促進します。

 

このホルモンの分泌が少ないと低身長症になりますが、逆に、多すぎると巨人症や末端肥大症を引き起こします。成長ホルモンは低身長症の治療薬に使われますが、強い運動に伴って増加するためスポーツの記録向上に有利とされており、ドーピング対象成分に入っているほどです。

 

このように、成長ホルモンの働きを見るために、より簡単に調べることができるIGF-1の量をまず計測するのです。

 

IGF-1の量が少ない場合には、今度は、成長ホルモンの分泌量を調べる検査が行われます。この検査を成長ホルモン分泌刺激(負荷)検査といい、成長ホルモンを分泌させやすくする薬を注射あるいは内服して、その後、成長ホルモンがきちんと分泌されるかを調べます。

 

この検査は、30分ごとに何度かに分けて採血します。検査にかかる時間は注射する薬の種類によって違いますがおおよそ1−3時間です。結果の判断ミスを防ぐために複数の薬を使って検査をするため、入院して検査を行うことが多くなります。

 

採血は、とくに小さな子の場合にはいやがるものですが、痛みが少ないような工夫がされていますから安心して検査が受けられます。

 

ここで異常が見つかった場合には、成長ホルモン分泌異常の原因となる脳腫瘍の有無のチェックをCTやMRIで行います。染色体異常を持つターナー症候群が疑われる場合には、染色体を採取してその形状を検査することもあります。

 

低身長の治療方法、副作用、治療期間とそれにかかる費用

突発性低身長に対する治療方法

治療の必要がなく、従って効果的な治療法もありません。ただ、その原因がストレスや栄養不足の様にはっきりしている場合には、原因を取り除くことが治療につながることがあります。

 

低身長症の薬について

代表的な薬として成長ホルモン関連薬がありますが、この薬が投与されるのは、医療機関での成長ホルモン分泌刺激(負荷)検査により、成長ホルモン分泌不全性低身長症、軟骨異栄養症、SGA,ターナー症候群であると診断され、また、骨端線が残っていることが条件となります。骨端線が残っていないと、ホルモン治療しても骨が成長しないので無駄骨になるためです。

 

成長ホルモン剤は、初めは人の脳から抽出されましたが、プリオンという病原体の混入によりこの薬を使用した患者がクロイツフェルト・ヤコブ病にかかったことで大きな話題になりました。

 

その後、遺伝子工学技術の進歩で、人の体内で作られるものと同じ成長ホルモンを人工的に作りだすことができるようになり、ソマトロピンとして現在使用されています。

 

市販薬の名前には、販売メーカーにより、ノルデイトロピン、ジェノトロピン、サイゼン、グロウジェクト、ヒューマトロープなどと色々ありますが、薬の量が違うだけで内容は全て同じものです。

 

この中で、サイゼンを例に取ってその臨床効果をあげておきます。約40例の症例で、治療前の身長の伸びが3-4cm/年であったのが、治療後には7-8cm/年と顕著な改善を示していました。この成績は、人の脳から抽出された成長ホルモンの平均6cm/年という値よりも優れています。

 

成長ホルモン療法は、体の中で足りない分のホルモンを補充してあげるだけですので、投与量をきちんと守っていさえすれば、とくに注意喚起されているような重大な副作用は起こりません。

 

もちろん、初期の成長ホルモン剤のようなクロイツフェルト・ヤコブ病にかかる可能性はありません。主な副作用としては頭痛や吐き気が挙げられ、骨や関節に症状が出ることもあります。これは、この薬の効果として骨や軟骨が伸びるため、それに伴ういわゆる成長痛が出るものです。

 

また、以前に成長ホルモンと白血病の関係が取りざたされたことがありましたが、現在ではこれらの間に因果関係は確認されていません。この他に、別の病気を持つ子供への成長ホルモン投与で問題となる場合がありますから注意してください

 

。甲状腺機能が悪くて成長が阻害されている子供の場合にホルモン療法で成長が促されると、増えた代謝量を少ない甲状腺機能で補いきれなくなって、甲状腺機能低下を引き起こす可能性があります。

 

また、成長ホルモンには細胞を増やす働きがあるため、悪性腫瘍を持つ子供への投与は禁止されています。

 

最近、ネットで、成長ホルモンの舌下投与スプレーの広告を目にします。日本内分泌学会ではこの方法について、「体内への吸収効率から見て有効性に疑問がある」として注意喚起しています。成長ホルモン剤の使用は、医師の指導の下に決められた処方をきちんと守って行うようにしてください。

 

成長ホルモン治療の治療期間とその間の治療費

成長ホルモンは内服ではなく注射により投与されます。この注射はペン型でカセット交換式のため、自宅でも簡単に使うことができます。

 

また、年長の子供では自分で使うこともできます。注意する点は、消毒をきちんとすること、薬の注入量のセットを間違えないこと、誤って空気を注入しないことなどです。成長ホルモンは就寝後早い時間に分泌されることが分かっているので、毎晩寝る前に注射するのが基本です。

 

一例として、ノルデイトロピンでは、専用のペン型注入器に10mgの成分が入っています。この成分を、それぞれの病気ごとに、1回に異なる量(0,175mg〜0,47mg/体重kg)を1週間で6−7回に分けて注射します。

 

成長ホルモンは早期に投与すればするほど効果が期待できます。そして、骨の成長が期待できなくなる思春期の終わり頃が投与の最終ということになります。

 

それにしてもかなり長期間の投与を行わなければならないことになりますから、親の負担は大変なものです。このため、公的保険制度の適用がされている上に、保護者向けに医療費の負担軽減措置が設けられています。

 

それには、小児慢性特定疾患治療研究事業、高額医療費制度、付加給付制度、地方自治体による医療費助成制度などがあります。これらの制度を利用すると、自己負担額を1割以下にすることも可能です。

 

例えば、成長ホルモン療法を受ける場合、小児慢性特定疾患の認定を受けると20歳までか、男子で156,4cm、女子で145,4cmの身長になるまでは助成が受けられます。この助成を受けられると、年収80万円以下の低所得層で月額1250円、850万円の高所得層で10000円または15000円の自己負担額で済みます。高額医療費制度では、自己負担額が一定の限度を超えた場合にこの分が返還されます

 

低身長症の手術について

軟骨居異栄養症で軟骨がきちんとできていない子の場合には、骨を引き延ばす骨延長手術を行うことができます。この手術には術式の違いによりイリザロフ法とISKD法の2種類があります。

 

イリザロフ法

骨を切断して人工的に骨折の状態を作り出します。骨折した骨は、折れた骨の隙間からまだ柔らかい新しい骨(仮の骨という意味で仮骨と呼ぶ)が作られ、この仮骨が硬くなって骨と骨がくっつき、隙間が埋められて治癒するという経過をたどります。

 

この隙間はごく小さいもののため、身長を伸ばすために体の外に装着危惧を取り付けて手術部分を固定し、仮骨ができるそばから隙間を外から引っ張って広げて、また仮骨を作らせるという操作を加えてだんだんに骨を長くしていきます。

 

この方法は、少し手助けしてやることで人の持つ再生能力を引き出すため、究極の再生医療と呼ばれることもあります。ただし、痛みが激しく感染症が起こりやすいなどの他に、施術費用が極めて高額であるという問題点があります。

 

ISKD法

基本的な原理はイリザロフ法と同じですが、骨の引っ張り方が違っていて、この方法では、骨の隙間に金属の棒を入れて磁石を使って遠隔操作で器具を伸ばして骨も伸ばすという方法です。ただし、日本では数院でしか実施されていないことや、やはり極めて高額である点が問題となります。

 

「背が低くても元気ならそれでいい」などと言わずに、一度、子供の身長をチェックして、気になるようなら病院の門をたたいてください。その上で、仮に何らかの病気が発見されたとしても、現在は、大変良い薬が開発されています。根気よく治療を続ければ大きな効果が期待できる治療ですから、希望を持って取り組んでください。

 

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